製品開発支援 Development Support

事例紹介:病院観察からの製品開発Case Study

病院の観察からはじめるデザイン思考

医療事故事例報告数やヒヤリハット報告件数は年々高まってきています。
こうした医療安全ニーズの高まりを受けて、医療現場の意見をしっかりと取り入れながら「間違いにくい、使いやすい」を追求したデザインソリューションの事例をご紹介します。

※一連のデザインソリューションは医療包装展示会Innopack(2017年4月19日〜21日)で発表させていただきました。

調査は市場性把握からスタートし、ニーズの理解を経て、
解決アイデアの具現化までを行いました。

PLUGのデザインソリューションプロセスチャート

STEP01 : Observation 観察調査

病院での観察調査を行い、医薬品の取扱い現場で発生するヒヤリハットやヒヤリハット防止のために行われている工夫を元に課題を発見しました。
今回は神奈川県の済世会横浜市東部病院様にご協力をいただきました。

発見された課題の一例
裏返ると識別できなくなるシリンジケース
表面では識別できますが、裏側になると同じ形状で遮光処理を施しているため識別できなくなっています。そのため、病院では注意喚起書を用意しなくてはならい状況。
課題1
表面の識別はできても、側面や頭部では識別困難なバイアル
表面からは識別できますが、側面部や頭部から見ると識別が困難となります。多忙の中、瞬時に判断しなければならない状況では、大きなヒヤリハットにつながりかねません。
課題2
スペースが少なく、識別が困難なPTPシート
PTPシート自体が小さいため、記載スペースが限られており、何が書かれているか分からない。デザインが似ていると識別が難しくなる。
課題3
子どもやお年寄りの誤飲問題
病院視察でのヒアリングを通じて知らされた、子どもやお年寄りの薬剤誤飲問題。PTPシートから薬を出さずに飲んだり、間違った薬剤を飲んだりする。
課題4

STEP02 : Workshop ワークショップとラフデザイン・プロトタイプ制作

観察調査で得られたFindingsをもとにワークショップを行い、解決のアイデアを可視化しました。
アイデアはすぐにラフデザインに起こしイメージを共有。絞り込んだ中でプロトタイプの制作を行いました。

【シリンジ】ひっくり返らない形状
【シリンジ】ひっくり返らない形状
【バイアル】文字+色+形で識別性UP
【バイアル】文字+色+形で識別性UP

STEP03 : Interview & Prototype インタビューとプロトタイプ改善

制作したプロトタイプは医療関係者に呈示してインタビューを行い、さらにブラッシュアップを行いました。

CASE 1
360度どの角度からでも識別出来るのは素晴らしいのですが、私たち看護師は瞬時に判断しなければならないので、持った感覚でも識別できるようにしてくれるとありがたいです。
CASE 2
おきあがりこぼしから着想を得た「裏返らないシリンジは」とても面白いですね。ただ、収納が困るので立てておけるようにできないですか?
CASE 3
PTPシートの端部フラップは現場ではすぐに切って捨てられてしまいます。やはり1包づつ記載されているほうが望ましいですし、曜日も記載されていると管理しやすくなりますね。
CASE 4
小児科の先生は喜びそう!同じ発想で大人用もできないですか?例えば、歴史モノとか物語になっているとか。他にも糖尿病患者の運動方法など、知識が増えるものがあるとうれしいです。
触っても、違いがわかるようにできませんか?
急いでいると視覚だけで十分に確認できないときがある。
(看護師 女性)
プロトタイプ改善例2
立ててしまうときはどうするんですか?
うちは立ててしまってます。
(看護師 女性)
プロトタイプ改善例1

医療従事者の方への実際のインタビュー動画はこちら

STEP05 : Design fix デザインの完成

立てて収納できる裏返らないシリンジ
裏返らないシリンジを収納しやすくするために、立てられるように改良しました。
完成デザイン1
フタの形状の違いから触覚でも識別できるバイアル
シュリンクフィルムでどの角度からも識別できるようにするだけでなく、持った瞬間に識別できるよう、フタの形状を容量に応じて変更しました。
完成デザイン2
L字型形状で記載スペースを増やし、識別を容易に
1包ずつL字型にすることで記載スペースを大きくしました。その結果、誤飲防止にも役立つようになりました。また、曜日を入れる事で飲み忘れ防止を促進しました。
完成デザイン3
CRSFだけでなく、子どもも大人も楽しめるPTPシート
子ども用だけでなく、大人も楽しめる戦国絵巻風や旅行風の台座も作りました。これにより、残薬問題解決の一助になるのではないかと考えています。
完成デザイン4